安全性は相手ごとに判断する

相手の前に並ぶ捨て牌を河(カワ)と呼びます。自分が切った牌で相手にロンされることが放銃(ホウジュウ)です。守るときは、まず誰への放銃を避けたいのかを決め、その人の河、鳴いた牌、リーチ宣言、場に見える牌を見ます。

同じ一萬でも、上家には通る根拠があり、対面には別の根拠しかなく、下家には根拠がない場合があります。安全性は牌に固定された性質ではなく、相手との組み合わせで決まります。

二人からリーチが入ったときは、一方に通る牌でも、もう一方には当たり得ます。両者に通る牌がなければ、「上家には本人が捨てた牌」「対面には数字の並びによる候補」のように、安全と考える根拠を相手ごとに書き分けます。

副露者にも同じ考え方が使えます。ただし、リーチ者と違って待ちが固定されているとは限らず、手出しのたびに形が変わることがあります。染め手、役牌、対々和など見える役の候補は読めても、見えない手牌までは確定できません。牌の危険度と、放銃した場合の打点を分けて考えます。

捨て牌の安全性は相手ごとに異なる

公開情報が増えても、他家の手牌がすべて見えるわけではありません。当たり牌を言い当てようとせず、「誰に対して、どんな根拠があるか」を分けて危険度を比べます。

対象者がすでに捨てた同じ牌

警戒する相手がすでに捨てている同じ牌を現物(ゲンブツ)と呼びます。その相手はフリテンの規定により、自分が捨てた牌と同じ牌ではロンできません。完全に降りると決めた場合は、最初にこの牌を探します。

現物が防げるのは、自分の一打による対象者のロンです。相手のツモあがりは防げず、別の相手に対する安全も保証しません。上家が四萬を捨てていても、対面が四萬を待っていれば対面には当たります。

他家の捨て牌を見逃したときのフリテンは、リーチの前後で続く期間が違います。Mリーグ公式戦ルールでは、非リーチ者が和了牌を見逃すと同巡内フリテンになり、自分の次のツモと打牌が終わるまでロンできません。リーチ後に和了牌を見逃した場合は、局が終わるまでフリテンが続き、以後はロンできずツモ和了だけが有効です。

リーチ者は待ちを変えられないため、リーチ後に他家が切ってロンしなかった牌は、その人に対して局終了まで通ります。非リーチ者の場合は、次のツモと打牌が終わると同巡内フリテンが解消され、その後の安全は保証されません。その間に手牌や待ちが変わることもあります。牌が切られた順番と、相手がリーチしているかどうかを見分ける必要があります。

現物が複数あるときは、切る順番も考えます。次巡以降も安全牌として残りやすい牌、別の攻撃者にも通る牌、自分の手を進め直しやすい牌はどれか。今切る1枚だけでなく、次巡の候補も残します。

両側に広がる待ちを絞る手掛かり

23萬があれば、一萬か四萬で順子が完成します。連続した二枚の両側を待つこの形が両面(リャンメン)です。フリテンと両面の形から、特定の待ちを除外する考え方を筋(スジ)と呼びます。

数牌は「1、4、7」「2、5、8」「3、6、9」の三系統に整理できます。四萬が対象者の現物なら、相手は23萬を持つ一萬と四萬待ちでも、56萬を持つ四萬と七萬待ちでも四萬でロンできません。そのため、一萬と七萬は、この二つの両面待ちに対する危険が下がります。

ただし、四萬が現物でも、一萬と七萬まで安全になるわけではありません。一萬だけを待つ形、一萬と字牌の二種類を待つ形、数字の間を待つ形は残ります。筋で除外できる範囲は現物より狭く、安全の保証にはなりません。

1、4、7の筋

一萬 四萬 七萬
四萬が対象者の現物なら、23萬の一萬と四萬待ち、および56萬の四萬と七萬待ちはフリテンになります。一萬と七萬は、両面待ちに対する危険が下がります。

2、5、8の筋

二筒 五筒 八筒
五筒が現物なら、34筒の二筒と五筒待ち、および67筒の五筒と八筒待ちを除外できます。二筒と八筒は両面待ちに対する筋です。

3、6、9の筋

三索 六索 九索
六索が現物なら、45索の三索と六索待ち、および78索の六索と九索待ちを除外できます。三索と九索も安全確定ではありません。

中央の現物から両側を見る場合と、端側の現物から片側だけを見る場合は根拠が異なります。一萬が現物でも、56萬による四萬と七萬待ちは残るため、四萬全体を安全とは言えません。数字の列だけを覚えず、どの二枚組が消えるのかを確認します。

筋では除外できない三つの待ち

頭になる一枚だけを待つ形が単騎(タンキ)です。二つの対子のどちらかが三枚になるのを待つ形を双碰(シャンポン)、数字の間の一枚を待つ形を嵌張(カンチャン)と呼びます。いずれも両面の構造を使わないため、筋だけでは除外できません。

一萬単騎:四萬が現物でも一萬は当たり得る

現物の四萬 一萬の単騎待ち
四萬が現物でも、頭の完成を待つ一萬単騎には関係しません。1、4、7という数字の並びだけでは安全と決まりません。

一萬と東の双碰:順子を使わない二種類待ち

一萬 一萬 東 東
一萬か東を引けば一方が刻子、もう一方が雀頭になります。四萬が現物でも、一萬の双碰待ちは否定できません。

13筒の嵌張二筒待ち:五筒の現物では消えない

現物の五筒 一筒 三筒
五筒が現物なら二筒は2、5、8筋ですが、13筒は二筒だけを待つ嵌張形です。34筒の両面を否定できても、この形は残ります。

役牌や七対子の単騎、順子の組み替えから生じる複雑な待ちもあります。筋は安全牌ではなく、「一部の両面待ちに当たりにくい牌」です。完全に降りるなら、筋より現物を優先します。

壁、ノーチャンス、ワンチャンス

は、同じ数牌が4枚すべて自分から見えている状態を利用する考え方です。手牌、河、副露、ドラ表示牌を合わせて四枚確認できれば、相手はその牌を隠し持てず、順子にも使えません。たとえば三萬が4枚見えているなら、相手は23萬を持てないため、一萬を両面で待つ形は作れません。

必要な構成牌が4枚見え、ある牌が特定の両面待ちに使われる可能性が消えた状態をノーチャンスと呼びます。三萬が4枚見えたときの一萬は、23萬による一萬と四萬待ちに対してノーチャンスです。ただし、一萬単騎や一萬の双碰待ちは残るため、ここでも「絶対安全」とは言いません。

ワンチャンスは、必要な構成牌が3枚見えている状態です。最後の1枚を相手が持っていれば順子待ちを作れるため、ノーチャンスほど強い根拠ではありません。残り1枚が山にあるのか、他家の手にあるのかも不明です。安全に切れる牌がなくなったときの比較材料にはなりますが、現物と同じには扱えません。

見えている三萬1枚目 見えている三萬2枚目 見えている三萬3枚目 見えている三萬4枚目 両面待ちに対してノーチャンスの一萬
三萬が4枚見えれば23萬の形を隠し持てないため、一萬は両面待ちに対してノーチャンスです。単騎や双碰などは別に残ります。

壁は自分の手牌も情報に含められる点が筋と異なります。たとえば自分が三萬を暗刻で持ち、河に残り1枚が見えれば四枚壁です。ただし、数える牌を間違えると安全性も誤って判断します。切ろうとする一萬が4枚見えているかではなく、相手の23萬という形を作れなくする二萬または三萬の見え方を確認します。

字牌には両面の筋がないため、「3枚見え」がどの3枚を指すかまで明確にします。自分の手牌の外ですでに同じ字牌が3枚見え、自分が4枚目を持っているなら、相手は同種牌を1枚も持てません。その4枚目は通常形の単騎、七対子、役牌の刻子や双碰には当たりません。ただし、対象の字牌を1枚も持たずに待てる国士無双にはロンされる可能性が残ります。

一方、「3枚見え」の中に今から切る自分の1枚を含み、手牌の外には2枚しか見えていないなら、まだ1枚が所在不明です。その1枚を相手が持っていれば通常形の単騎や七対子の待ちが成立し得るほか、国士無双の待ちも残ります。見え枚数を数えるときは、切る候補を含む総数なのか、自分の手牌の外で見えている枚数なのかを区別します。字牌は数牌の筋と同じ方法で判断せず、残り枚数と想定される役から評価します。

押し引きを決める六つの条件

牌の危険度が分かっても、押すか降りるかはまだ決まりません。自分の手に、その危険を取るだけの価値があるかを、次の六つで比べます。

  1. 手の完成度:あがり形まであと一枚の聴牌(テンパイ)か、聴牌まであと一段階の一向聴(イーシャンテン)か、それより遠いかを確認します。聴牌なら待ちの残り枚数も見ます。
  2. あがったときの価値:役とドラから見込み打点を出し、親なら連荘の価値も加えます。役や点数はリーチ麻雀の役一覧点数計算ガイドで確認できます。
  3. 局の進み具合:局が始まってから何巡進んだかを表す巡目(ジュンメ)を確認します。終盤ほど、あがりまでに引ける回数が少なくなります。
  4. 点差と残り局数:東一局かオーラスか、あがりや失点で着順がどう変わるかを見ます。
  5. 相手の脅威:リーチか仕掛けか、相手が親か子か、何人が攻めているか、通す必要がある危険牌は何枚かを確認します。
  6. 使える安全牌:降りた場合に何巡しのげるかを、対象者ごとの現物、壁、ノーチャンス、筋から見積もります。

押す方向に傾きやすい条件

聴牌していて待ち牌が多く残り、和了時の打点や順位上昇の価値が高く、通す危険牌が少ない場面では押しやすくなります。親番を続けられるか、オーラスで着順が上がるかも材料です。ただし、相手が親か、複数人が攻めているか、放銃で着順が落ちるかによって結論は変わります。

降りる方向に傾きやすい条件

2シャンテンで手が遠い、和了しても安い、待ちが弱い、終盤で有効牌が少ない、危険牌を何枚も通す必要がある。このような場面では降りやすくなります。現在の順位を守りたいときも、失点を避ける価値が上がります。ただし、オーラスで和了しなければ着順が上がらない場合は、手が遠くても攻める理由があります。

「放銃率が何%なら押す」「何巡目なら必ず降りる」と一律には決められません。採用ルール、持ち点、順位点、赤牌、相手の打点、自分の待ちによって損得が変わるからです。押した後も、別のリーチが入ったり待ち牌が減ったりすれば、判断し直します。

四萬を切る判断が変わる三つの例

満貫聴牌で通す危険牌が一枚

四萬は子のリーチに現物でも筋でもなく、当たり得る牌とします。自分が残り枚数の多い満貫聴牌で、この一枚を通せば待ちを維持できるなら、和了までの近さと打点から押す選択が有力です。相手が親ではなく、放銃で着順が大きく落ちないなど、ほかの条件も合わせて見ます。

聴牌まで二段階で終盤

同じ四萬でも、自分の手が聴牌まで二段階あり、終盤にさらに危険牌を複数通す必要があって、安全牌を持っているなら条件が逆になります。あがりまでの距離と残り手番が見合わないため、降りる側に傾きます。受け入れの比較は麻雀の牌効率入門で確認できます。

オーラスであがりが着順条件

オーラスのラス目で、あがれば着順が上がり、降りればそのまま終局に近づくなら、同じ四萬でも押す理由があります。反対にトップ目で、四萬への放銃によって逆転されるなら、失点を避けたい場面です。開始前にウマとオカを含む精算ルールを共有しておくと、着順が変わる価値も計算できます。

待ち牌の推定と押し引き判断は同じ問題ではない

公開研究では、リーチ者の手牌構成から待ち牌を推定する方法が提案されています。現物、筋、壁も、見える情報から待ちの候補を狭める手掛かりです。

待ちを推定できても、押すべきかどうかは別の問題です。自分の手の完成度と価値、放銃したときの失点、点差、残り局数まで比べる必要があります。

相手別の根拠から練習する

最初は警戒する相手を一人に絞り、手牌の各牌へ「現物」「筋」「四枚壁」「根拠なし」と印を付けます。当たり牌を予想するより先に、それぞれの根拠が通用する範囲を分けます。慣れたら二人リーチを題材に、相手ごとの列を作って共通する安全牌を探します。

次に、迷った局を六項目で記録します。手の完成度、見込み打点、局の進み具合、点差と残り局数、相手の脅威、使えた安全牌です。放銃したかどうかで採点せず、切る前の情報と押して得られる見返りが釣り合っていたかを見直します。

長期では放銃率だけでなく、アガリ率、平均着順、トップ率、ラス率も同じ期間で確認します。数値が変わった理由は一つとは限らないため、個別の局面メモと結び付けて仮説を立てます。

よくある守備の間違い

  • 一人の現物を全員への安全牌にする:現物は対象者ごとに違います。複数人の攻撃には共通現物か、各相手への根拠が必要です。
  • 筋を絶対安全と呼ぶ:筋が除外するのは特定の両面待ちです。単騎、双碰、嵌張などは残ります。
  • ワンチャンスをノーチャンスと混同する:3枚見えでは最後の1枚を相手が使える可能性があります。4枚見えとは根拠の強さが違います。
  • 自分の手牌を見える枚数に含めない:壁は河だけでなく、手牌、副露、ドラ表示牌を含む、自分から見える全情報で数えます。
  • 聴牌というだけで押す:待ちの残り枚数、打点、危険牌の枚数、相手が親か、着順条件まで確認します。
  • 一度押したら降りられないと思う:新しいリーチ、危険牌の追加、待ち牌の減少で条件は変わります。自分の手番ごとに判断を更新します。
  • 一回の結果で戦術を決める:放銃しなかった危険牌も判断根拠は弱いままです。結果と選択時の情報を分けます。

長期成績は一打の正しさを証明しない

Mリーグ公式成績には、平均着順、アガリ率、放銃率、リーチ率、副露率など複数の長期指標があります。どれも一定期間の結果を示す数字で、一回の打牌が正しかったことまでは証明できません。個別の判断は、その時点で見えていた情報から検討します。

安全の根拠と押す価値を分ける

守るときは警戒する相手を決め、まず現物を探します。現物がなければ、筋、壁、ノーチャンス、ワンチャンスを、それぞれの限界を踏まえて使います。筋や壁だけで安全が決まるわけではありません。

押し引きは、手の完成度、あがったときの価値、局の進み具合、点差と残り局数、相手の脅威、使える安全牌の順で確認します。条件が変われば、同じ牌でも結論は変わります。

参考資料

公式ルールと研究で扱われている条件をもとに、初心者が使いやすい確認順に並べています。掲載した安全度は相対的な手掛かりで、特定の放銃確率や、すべての局面に当てはまる押し引きの基準ではありません。